約 1,207,343 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/852.html
140文字SS:プリキュア&プリキュア【2】 1.ハピネスチャージ&スマイル「りぼん達ってどう見ても アレだよね」/ドキドキ猫キュア みゆき「本物のお姫様だなんてすごーい☆」 ひめ「そんな事、あるけど♪」 りぼん「まったくひめは(呆れ)」 なお「天道虫~><」 れいか「すいません、なおは昔から虫が苦手で」 りぼん「はあ・・・」 何も言えないりぼんだった。 2.スイート&S☆S「動物の勘」/ドキドキ猫キュア その時、俺は感じた。身の危険を・・・ パンパカパンに遊びに来てた奏「猫・・・」ウズウズ ハミィ・エレン「コロネさんの肉球が!!」 響「ちょ!?人様の猫は駄目だって~」 奏「><ハア~」 咲「何事!?」 アコ「禁断症状よ」 3.ラブせつ(ハピネス32話リンク)で『一番厄介な存在』/ねぎぼう 「あまずっぱーって俺達の台詞をパクっているぞ、イース!」 「うるさいわよ」 「テレビは黙って観るものだよ」 地球のTV番組を見る3人。 (あんな子がいると一番厄介な存在になるわね。それにしても神様も黙認って何?) ふと一人の野球少年のことが頭に浮かんだ。 (まあ、あの子なら心配いらないわ) 4.フレッシュ&???「フレプリ6話?」/ドキドキ猫キュア 南「もっとなけ、もっとわめけ(笑)」 ?「全部あんたの仕業ななのね(怒)」 ?「ハンバーグカレーをよくも!!」 ?「倒すことけってーい」 4人「Yes!」 ラブ達「あれ?」 南「プリキュア・・・何人いるというんだ・・・」 5.ハピネスチャージ&???「情報不足」/ドキドキ猫キュア オレスキー「ハハハ!たまには別の町を襲うのだ♪いけチョイアーク!」 チョイアーク達「チョイ~><」 オレスキー「こんな明らかにひ弱そうな女子高生一人に何を手間取っているのだ!!」 ゆり「次はあなたが相手かしら?(真顔)」 6.ラブせつで『ちょっと黙って』(withスマイル)/ねぎぼう やよいから借りてきたという『太陽マン』のDVDをラブと一緒に観てたら、もううるさくって…… 太陽マンと敵の女幹部とのまさかの雰囲気なシーンにまで騒ぐものだから 「ちょっと黙ってなさい!」 って『強行手段』に出たわ。 そしたら、最近はラブ・ロマンス観ててもうるさくするの。 もう、馬鹿…… 7.ハピネスチャージ&???「ラブリーの場合」/ドキドキ猫キュア ラブリースーパーパーンチ! ラブリースーパービーム! ラブリースーパーライジングソード! ハニー「ラブリーすごーい♪」 プリンセス「私達の出番はないわね」 フォーチュン「自力で動けるものなのアレって・・・」 ロボラブリー「気合いで余裕」 8.ラブせつで『全部全部、君のせい』(○○とコラボ)/ねぎぼう 「全部全部全部、君のせいだね」 「そんなこと俺に言われても知らんダースの犬、なんてな」 「少しは少しは少しは反省したまえ」 (ふん、サウラーもまた変な作戦で失敗したようだな。さて、今日こそリンクルンを……) ―― 「せつなー、待たせた?」 「ううん、そんなこと、ありえな~い!(何!?)」 9.ハピネスチャージ&ドキドキ!「これは説教待ったなし」/ドキドキ猫キュア りぼん「ひめったらこんなに残して!」 ひめ「だってそれマズイもん」 りぼん「食べないのに買うなんて・・・」 ひめ「わたしはカードが欲しかったの~!お菓子はオマケよ(笑)」 エース「ほほう?(怒)」 ヒメルダ終了のお知らせ 10.「これは説教待ったなし」続きの話!?/140文字SSスレ142様 (5分間なんとか逃げ回れば) ♪ニン・ニン・ニンジャ かわルンルン! 「さらばじゃ、ドロン!」 「逃がしはしませんわ!エースショット、ばきゅ~ん!」 「あ、体が動かない」 「そもそもお菓子というのは……」 (もうそろそろ5分) 「話は終わっていませんわ!」 亜久里に戻ってもお説教は延々と続く。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/994.html
悲しみと喜び。絶望と希望。苦悩と癒し。不幸と幸せ。 それらは単に、相反するものではない。 苦悩が幸せの始まりになったり、悲しみをきっかけに希望が訪れたりすることもある。 それに気付けた今だから、私は語ることが出来たんだろう。 かつては思い出したくもないと思っていた、私の過ちの記憶。 でも実は、大切な絆へと繋がっていた、私たちの始まりの記憶を。 Witness ~目撃者~ あの最終決戦から、早いもので1年半の年月が流れた。四ツ葉町のところどころに残っていたラビリンス襲撃の跡も、今ではかなり修復され、目立たなくなっている。 夏休み真っ盛りの四ツ葉公園。じりじりと照りつける太陽に負けず、セミたちがその短い生を、これでもかと響かせる。 「はーい美希たん、お待たせ!カオルちゃんのドーナツ、久しぶりでしょ~!」 「ラブ、いくらなんでも買い過ぎよ!いったい何人で食べる気なのよっ!」 「ラブちゃん、昔っから、嬉しいと見境なくなっちゃうのよね。」 「見境がないのは、ドーナツのことだからじゃない?」 ラブたち4人は、久しぶりにドーナツカフェに集まっていた。本格的にモデルの仕事を始めた美希の休みと、年に数回、桃園家に戻ってくるせつなの予定がやっと合ったのだ。そうでなくても、ラブたちももう高校生。最近は、ミユキの後押しで少しずつダンサーとしての活動を始めたラブも、進学校で勉強に忙しい祈里も、以前のように頻繁に会うことは出来なくなっていた。それでも・・・。 「美希、ラブから聞いたわよ。このところ、海外ロケで忙しいんですって?」 「うーん、忙しいってほどでもないんだけどね。今度、10代のモデル数人で写真集を出す企画があって、それに運よく選ばれたもんだから。」 「凄いじゃない。一歩一歩、夢に近づいているのね。」 「あたし、たっくさん買って、クローバータウンストリートのみんなに配りまくるんだ~。だから美希たん、サインよろしくねっ!」 「たくさんって言っても、ラブの100円玉貯金じゃ、アテにならないでしょ?」 相変わらず全力ではしゃぐラブ。そんな彼女を呆れた口調でたしなめながら、嬉しそうに笑っているせつな。少し赤く染まった頬を隠すように、澄ました顔でストローをくわえる美希。 久しぶりに会ったのに、少しも変わらない仲間たち。その様子をニコニコと眺めていた祈里が、ほぅっと小さくため息をついた。 「美希ちゃんは凄いなぁ。」 「何よ、ブッキー。どうしたの?」 「だって、モデルさんのお仕事って、いろんな人と、いろんなところへ行かなくちゃならないでしょ?初めて会った人と、何日も一緒に過ごしたりもするんでしょ?わたしには、絶対に無理。」 祈里は、ポツポツと話し始める。 獣医になりたい彼女は、そのためにどの大学を目指すか、既に考え始めている。今のところ、彼女の理想に最も合った環境にあると思えるのが、父の母校でもある地方国立の獣医学部だ。 広々とした敷地。伸び伸びと暮らす、様々な種類の動物たち。そんな環境で勉強出来たら、どんなに楽しいだろう。 「でも・・・」 祈里の顔は、そこで俯いてしまう。 でも、その大学に通うには、住み慣れた家を離れなければならない。生まれ育った四ツ葉町を離れ、両親や、ラブたち気心の知れた友人たちとも離れることになる。 独り暮らしに憧れる友人は、祈里の周りにも結構多い。でも、彼女は怖かった。誰も知らない土地で、一から新しい友達を作り、暮らしていかなくてはならないことが。 そんなことを言ったら、夢を真摯に追いかけている仲間たちに、笑われるかもしれない。でも・・・。 (わたし・・・自信ないよぉ。) しばらく気にしていなかった、引っ込み思案の自分が前面に出て来ているのを、祈里は感じていた。 「大丈夫だよ、ブッキー。ブッキーは優しいから、誰とでもすぐ仲良しになれるって。」 ラブがすぐに祈里の気持ちを察して、明るく声をかける。 「まだ先の話なんだから、ゆっくり考えればいいじゃない。でもね、ブッキー。」 そう言って、美希がいたずらっぽくウィンクをする。 「人間だって、立派な動物よ?そう考えれば、ブッキーの得意分野でしょ?」 「そうだよね、美希たん!えーっと、えーっと、ホモ・・・ホモ・サスペンス!」 「どこのホラー映画よ、ラブ・・・。それを言うなら、ホモ・サピエンスでしょっ!」 幼馴染のいつもの掛け合いに、ようやく祈里の頬も緩む。 「ありがとう。ラブちゃん、美希ちゃん。わたし、やっぱり弱虫よね。プリキュアになって、ダンスを始めて、自分が少しずつでも変わっていけたって、そう思ってた。でも、プリキュアじゃなくなったら、元の弱虫のわたしに戻っちゃったのかな。もっと強くならなくちゃ、ダメね。」 そう言って弱々しく笑う彼女に、すぐ隣りから、少し低くて優しい声がかかった。 「ブッキーは弱虫なんかじゃないわ。それどころか、とっても勇気のある女の子よ。プリキュアになる前からね。」 (・・・え?) ラブが、美希が、そして当の祈里が目を丸くしたのは、そう言ったのが誰あろう、せつなだったから。 せつなと初めて会ったとき、美希も祈里も、もうプリキュアだった。そしてそのことを、勿論せつなも知っている。 (それなのに・・・何故?) 「あーっ、わかった!せつな、あのときだねっ?」 口を開こうとしたせつなを遮ったのは、ラブの大声。得意満面なその顔を見て、せつなはニッコリと微笑む。そして少し目を伏せながら、静かに祈里に語りかける。 「ブッキー。あなたはまだ自分がプリキュアになるなんて知らないときに、ナケワメーケになったラッキーに、駆け寄ってきたでしょう?」 「・・・あ。」 祈里の脳裏に甦る光景。 河原で暴れまわるラッキーに挑むピーチとベリー。そして・・・あの時、橋の上からこちらを見下ろしていたのは・・・かつてのせつなの姿である、ラビリンスの幹部・イース。 「私、あの時ほど驚いたことは無かったわ。だって、ごく普通の女の子が、いきなりナケワメーケに駆け寄ってきて、しかも説得し始めたんですもの。暴れちゃダメ、私にはわかる、助けて欲しいんでしょう?って・・・。一瞬、コントロールも忘れちゃったわよ。」 でも、そのすぐ後に危険な目に遭わせちゃったわね。せつなの心から申し訳なさそうな口調に、笑ってかぶりを振る祈里。そう、あの直後にナケワメーケに襲われて、キルンが祈里の携帯に飛び込み、彼女はキュアパインとして覚醒したのだ。 「ナケワメーケを説得したのって、おそらく後にも先にも、ブッキーだけだと思うわ。あんな勇気が出せるんだもの。ブッキーは絶対に、弱虫なんかじゃない。プリキュアにならなくても、最初からね。」 だから、自信を持って。そう言って、まっすぐに自分を見つめるせつなに、祈里は目を潤ませる。 イースだった頃のことを、せつなは今まで、滅多に語ることはなかった。それは、せつなにとっては罪の記憶。思い出すだけで痛みを伴う、せつなの心の傷だったから。それがわかっているから、祈里たちも、彼女にその頃のことを尋ねたりはしなかった。でも今、彼女は自分を励ますために、自らあの時のことを語ってくれたのだ。 そして祈里も思い出す。自分を信じよう、そう心に誓って河原を駆け戻ってきた、あの時の気持ちを。キュアパイン誕生のきっかけとなった、あの決意を。 だから彼女は、今日一番の笑顔を、傍らに座る親友に返した。 「ありがとう!せつなちゃん。」 祈里の言葉に、くすぐったそうに笑うせつなを見ながら、美希は不思議な気持ちになる。かつて、あのイースだったとはとても思えないような、彼女の優しい眼差し。でもその口から語られたのは、紛れもないイースの記憶で・・・。イースの中に、確かにせつなが居たことを、美希は改めて実感する。 そして、心から嬉しく思う。イースだった頃の自分のことを、こんなに穏やかに語れるほど、彼女が自分を許せるようになったということを。 勿論、そんなことを口に出して言える美希ではない。だから、口から出た言葉は。 「へ~え。せつな、そんなに驚いてたんだ。」 「え、ええ。」 「そうは見えなかったわよ、あの時は。」 美希の大きな瞳に覗きこまれて、せつなの頬が一瞬で真っ赤になる。が、そこはせつなも負けてはいない。 「ホントに見てたの?ベリーもピーチも、ただ唖然として、ブッキーだけを見つめてるように見えたけど。」 「そ、そりゃあ仕方ないじゃない!まさか、あんなタイミングでブッキーが来るなんて思わな・・・あ。」 「ぷっ」 「うふふ」 「あははは」 「もうっ!・・・ふふふっ」 四ツ葉公園に、クローバーの笑い声が響いた。 その夜。 桃園家のベランダに立ち、せつなは空を見上げていた。昼間の暑さは和らぎ、今は心地よい夜風が髪を揺らしている。中天には、少しぼやけた満月。ラビリンスでは見ることのできない月が、明るく夜空を照らしている。 (ヘンね・・・。) 昼間のことを思い出しながら、せつなは心の中でつぶやく。 最近になってやっと、イースだった頃の自分とも、きちんと向き合えるようになってきた。だからあの時のことも、語ることが出来たんだろう。 生まれ変わって、何も知らない世界に放り込まれたせつなには、祈里の不安は痛いほどわかった。でも、その不安を乗り越えた先にあるものの、素晴らしさを知っているから・・・そして、それを教えてくれた1人は紛れもなく彼女だから、祈里を勇気付けたかった。祈里に、自分が知っている彼女の勇気を、思い出してほしかった。 だから、気後れする心を押さえて、敢えてあの時の話をしたのだけれど。 (まさか、あんな気持ちになるなんて・・・。) フッと小さく微笑んだとき、隣りの部屋のガラス戸が、カラリと開いた。 「あ、せつな。やっぱりここに居た。」 せつなの隣りにやってきたラブは、ベランダの手摺りにもたれ、輝くような笑顔を見せる。 「ブッキー、きっと、すっごく嬉しかったと思うよ、せつなの話。」 「そうかしら。」 「うん!あたしも、あの時のせつなの気持ちが聞けて、嬉しかった。きっと、美希たんもそうだと思うよ。」 「そんなこと言われたら、恥ずかしいわ。」 せつなは顔を赤らめる。そして少しの沈黙の後で、 「でも、私も嬉しかったわ。」 ポツリとつぶやいた。 「ねぇ、ラブ。以前、私に言ってくれたわよね。辛い思いは、いつか喜びに変えられる、って。ホントね。」 そう言って、せつなは一番の親友に笑いかける。 「私ね。ブッキーにあの時の話をしようって決めたとき、話すのが少し怖かったの。話すのが・・・もっと辛いだろうと思ってた。だって、あの時も私は沢山の人たちを酷い目に遭わせたし、そのことを、今でもはっきりと覚えているから。確かに、胸の痛みはあったわ。でも・・・なんだか不思議なんだけど、話してて、とても・・・懐かしかった。」 せつなの目が少し潤んでいるのに、ラブは気付く。 「私、思い出なんて、イースだった頃の自分には無いって、そう思ってた。生まれ変わって、この町に来て、お父さんやお母さんと出会って、ラブたちと一緒に過ごしてからの時間が、私の大切な時間の全てだと思ってた。でも、違ったのね。」 ラッキーに語りかける祈里の、胸の前でギュッと握られた両手。ピーチとベリーの、完全にシンクロした華麗な動き。突如現れた黄色い閃光。戦士と呼ぶにはあまりにも可憐な、でもその瞳に強い輝きを宿した、パインの姿・・・。 あの時は、忌々しく思っていたはずだ。それなのに、今鮮明に思い出される景色はとても愛おしく、温かく胸の中に映し出され、喉元までこみ上げて来て、少しだけ苦しい。 これは、懐かしさ。私は、イースだったあの時の情景にも、懐かしさを覚えている。きっとそれは、大切な仲間になった彼女たちの姿が、そこにあるから。大切な仲間たちの、始まりの記憶。いや、様々な困難を乗り越えて絆を育んだ、私たちの始まりの記憶だから。それに気付いて、自分はなんて幸せなのだろうと、せつなは思った。 「ね、ラブ。」 「ん?」 「やっぱり、ラブが最初に気が付いたわね。私が、何の話をしようとしているか。」 「ああ、そのこと。だって、せつながプリキュアになる前のブッキーに会ったのって、あのときしかないよなーって。そりゃ、あたしが知らないところで会ってたのかも、とも思ったけどさ。でも、それなら今まで話が出なかったのがおかしいし。」 「ありがと。ラブはいつだって、私のこと、全部信じてくれてるのよね。」 「えへへ・・・」 良かった、と思いながら、ラブは笑う。 イースだった頃のせつなも、せつなはせつな。ラブはずっと、そう言い続けてきた。本当に、そう思っているから。だからこそ、ラブにはすぐにわかったのだ。せつなが、祈里にあの時の話をしようとしているのが。 せつなが過去の自分を、イースだった頃の自分を、全て否定するのは嫌だった。過去の自分を否定しているのに、その罪だけを自分の罪として、苦しんでいるのを見るのは辛かった。だって、あの頃のせつなも精一杯生きていたことを、ラブは知っているから。 だから、せつながあの時のことを懐かしいと思えたことが、ラブにはとても嬉しくて・・・その嬉しさが、今まで訊きたくて訊けなかった、「あの時」のことを尋ねさせた。 「ねぇ、せつな。ひとつ訊いてもいい?」 「何?」 「あのさ。美希たんが初めてキュアベリーになったときも、せつなはあの場に居たよね?」 「ええ、居たわ。」 「じゃあさ。・・・あたしが、初めてキュアピーチになったときも、せつなは側に居てくれたの?」 「え?」 「あ、いやー、確かにあの後、しゃべった記憶は何となくあるんだけどさ。ほら、あの時は、そのー、半分ピルンに操られてるみたいだったっていうか、自分が自分じゃないみたいだったっていうか・・・。だから、正直、一体どういう状況だったんだか、よくわからなくてさ。美希たんがベリーになったときも、ブッキーがパインになったときも、あたしは割と側にいたけど、あたしのときは2人とも居なかったから、ちょっと寂しかったっていうか・・・。あの時はどうだったんだろうって、思ったりしてさ。」 わざとせつなの方を見ず、少し上気した顔で、月を眺めて一気にしゃべるラブ。その横顔がなんだか幼く見えて、せつなは思わずクスッと笑ってしまう。 「ラブったら、何照れてんのよ。」 「いっ!照れてなんか・・・」 「居たわよ、私は。ちゃんと見てたわ。」 「ホント?」 「私も、あの時が初めてだったんだけどね、ナケワメーケを呼び出したのは。ラブが、スタンドマイクを持ってナケワメーケに向かって行ったとき、ああ、やっぱりこの子が現れたな、って思った。」 「え!?なんで?」 「あの前日だったかしら。占い館で初めて会ったでしょ?私たち。あの時に、なんか予感があったのよね。この子と私は、長い付き合いになりそうだな、って。」 意味が全然違うけど、実際そうなったわよね。そう呟きながら、今度はせつなが月を見上げる。 「スモークの中から、ピーチが現れたときにね。正直言って、なんて綺麗な戦士なんだろう、って思ったわ。格好だけじゃなくて、戦ってる姿がとても綺麗で、途中から、これは戦いなんだろうか?って思ったの。ヘンな言い方だけど、なんだか、ナケワメーケが喜んでピーチに倒されたみたいに見えて、凄く不思議だった。」 今のせつなには、その不思議さのわけがわかる。 荒ぶる力を、受け止め、鎮め、そして癒す。相手を倒すのではなく、あるべき姿へと浄化する。それが、プリキュアの戦いのプロセス。大切なものを守る力。その力に、かつて彼女も救われ、やがて自らその力を受け入れて、他者へと向けられる存在になった。そう、今隣りで微笑む、友のお陰で。 「えへへ・・・せつなぁ、照れるよぉ!」 いきなり横から抱きついてきたラブを、せつなは辛うじて受け止める。 「ちょっと、何よラブ、いきなり。」 「ゴメンゴメン。でもさ。」 ラブはせつなに抱きついたまま、目を輝かせて言う。 「せつな、気付いてた?あたしたち、プリキュア4人全員の誕生に、居合わせたんだよ。みんなの大事な瞬間を、ちゃんとこの目で見られた。それってさ、凄く、幸せなことだと思わない?」 「そうね。そう思う、ホントに。」 今また新たに湧き上がる、不思議な懐かしさを快く思いながら、せつなは頷く。 プリキュアのリーダー・キュアピーチと、ラビリンスの幹部・イース。敵対する立場で、同じ光景を見ていた2人。でも今2人の胸に去来する景色は、きっと同じ温かさを伴ったもの。そう思える自分が、とても嬉しい。 「あたしさ。今日、せつなとブッキーを見ていて、思ったんだ。」 ラブは、自分に言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 「思い出は過去のものだけど、それを大事に覚えていれば、誰かが悩んだり、迷ったりしたとき、その思い出の中にある大事な気持ちを、伝えることが出来るんだな、って。 だから、今までの思い出も、これから作る思い出も、大切に、大切にしていこうって。」 「そうね。私も、大切にしていきたい。」 自分もまた、仲間たちに、本当の気持ちに気付かせてもらったことがあった。 美希が皆を叱咤し、祈里が励まし、ラブが笑顔で語りかけるのを、何度も見てきた。 そして、それはきっと、これからも変わらない。 「あれ?せつな。顔、真っ赤だよ?」 「・・・。」 「ひょっとして、照れてる?」 「・・・自分だって、照れてたくせに!」 「え?そうだっけ?」 「もう知らないっ!ラブなんか。」 「えーっ!ちょっと、せつなぁ!」 これから先、私たちひとりひとりが、必ず出会っていくもの。 不安や戸惑い。悲しみや、苦悩。 それらを一緒に、受け止める。癒すことなんて、出来ないかもしれない。 でも、親友のあるべき姿、本来の輝きを、ほら、ここにあるよと差し出すことはできる。 愛を、希望を、祈りを込めて。心から、幸せを願って。 きっとそれが、これからも続いていく、私たち4人の絆。 それぞれの道を歩んでいても、私たちはいつも、これからも。 互いが互いの、目撃者。 ~終~
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/674.html
爽やかな風、春の空気の香り。 薄着の春物を軽やかに着こなす美希。 軒先に咲く梅の花を見ながら、新しい季節の到来を感じる。 最近、美希と一緒に過ごす時間がどんどん増えてきた。 誘うのはいつも美希の方。でも、せつなの表情も嬉しそうだ。 ただ、一つ問題が。 「そうね」 「………………」 「………………」 また会話が途切れてしまう。 せつなは急いで次の話題を探す。 あれこれ思案してる美希の負担を軽くするために。 ずいぶんこの世界に慣れたとは言え、せつなには色んな知識が足りない。 大抵の場合、せつなにとっての会話は、やりとりではなく知識の吸収だ。 だから、どうしても返答が短くなる。 「ごめん、せつな」 「もう、どうして美希が謝るのよ」 しょげた顔で美希が謝ってきた。 せつなも何も思いつかない、せめて一歩距離を縮めて気持ちを伝えた。 クラスの様子を思い出す。せつなはクラスの人気者だ。 憧れている者も多く、たくさんの人がせつなに話しかける。 しかし長くは続かない。間が持たず、隣のラブに話し相手を移してしまう。 ラブとブッキーは違った。 ラブと一緒に居る時は、不思議と自然に口から言葉が紡がれていく。 ブッキーとはやはり会話が続かない。しかし、彼女の側は心が安らぐ。 ときどき目を合わせる。そっと笑いかける。それだけで満たされた。 「だって、誘ったのはアタシなのに……退屈してない?」 「私は楽しいし、嬉しいわ。私こそごめんなさい」 美希とは、会話が続かない上にそれがつらかった。 気まずい空気。美希の困った顔。 その原因が自分にあると知ってからは、せつなも緊張するようになった。 でも会いたい。 それでも嬉しい。 どきどきして、わくわくする。 焦りと不安と緊張感の連続。 なのに、どうしてこんなに楽しいのか不思議だった。 「ねえ、せつな、もうじきバレンタインよね」 美希がこれだっ!とばかりの顔で話しかけてきた。 「好きな人にチョコレートを渡して告白する日ね。不思議なイベントね」 せつなも安心した顔で続ける。そのイベントはラブから聞いていた。 「どの辺が不思議なの?」 「告白するなら、その日じゃなくてもいいのにって、そう思っただけよ」 みんなでいっせいに同じ日に告白をする。 自由を良しとするこの世界において、それは不自然にも思えた。 「それはそうね。でも、普段は言い出しにくいから、 バレンタインデーに背中を押してもらうってのもいいんじゃないかしら」 「ふふ、なんだか美希、張り切ってるわね」 気がついてないのだろうか。美希は握りこぶしまで作っていた。 生き生きしてる美希の表情を見て、せつなも気持ちが弾んできた。 「そっ、そうかしら。気のせいよ」 「ならいいけど、美希が誰かに告白しちゃうんじゃないかって思ったわ」 くるっと一回転して振り返って笑いかける。 本気で思ってるわけじゃないわって意思表示。 「アタシが誰かに告白したら、嫌?」 せつなの顔を覗き込みながら話す。表情を見逃すまいとするように。 「嫌って言うか……なんだか寂しいわ。 うん、やっぱり嫌なのかもしれないわね」 美希に好きな人が出来る。美希が幸せになるのは嬉しい。 でも、もう自分とこうして過ごせる時間が取れなくなるかもしれない。 それは寂しかった。 「そ、そっか。せつなは誰かに告白したりするの?」 期待を込めた顔でせつなを見る。 意味が理解できずぽか~んとしてしまった。 美希の表情がすぐに不安そうなものに変わっていく。 「えぇ~、私は考えてないわ」 愛の告白。愛ってなんだろうと思う。 大切な人はたくさん居る。命にかえても守りたい人たち。 だけど、もし、二人きりでずっと過ごすなら。 「そっか……」 「もしかして、今度は落ち込んでる?」 せつなは、元気のなくなった美希を見て不安になる。 また良くないことを言ってしまったのかもしれない。 「えっ、ううん。そんなことないわよ。 むしろほっとしたと言うか」 「ほっとした?」 告白しないほうがいいと思ってる。 なら美希も自分と同じように、寂しいと感じてくれているのかもしれない。 「あ、やっぱりなんでもないない」 探るようなせつなの表情に気がついて、美希は笑ってごまかした。 「ほんと、今日の美希は変よ」 きっと自分も変なんだろう。意識しすぎだ。 今まで相手の気持ちがこんなに気になることはなかった。 でも、心はこんなにも弾んでいるもの。だからこれは悪いことじゃない。 そう思うことにした。 コトコトコト 湯気が立ち上る。 チョコレートの匂いが部屋中に染み渡る。 外はまだ薄暗い。まだ普通なら誰も起きていない時間。 せつなはチョコを湯煎してハートの型に流し込む。 「せつな、おはよ~」 「ラブッ、こんな時間にどうしたの?」 寝巻き姿のラブが元気よく入ってきた。 「ん~なんか良い匂いにつられて起きちゃった」 「普段は起こしても起きないくせに」 (目覚まし鳴らしても起きてくれませんのや) タルトに何度か泣きつかれたこともあった。 「たはは、せつなチョコ作ってるんだ」 「ええ、ラブは昨日の晩作ってたでしょ。私はまだだったから」 興味津々って感じで、ちょこまかちょこまかとくっついてくる。 幸せに敏感なラブは、こういった行事やイベントに凄く関心が強い。 「へ~、せつなもハートの型なんだ。えっ、これ?」 「だめよっ、見ないで!」 慌てて体で隠した。特に一人一人に書いたメッセージは読まれたくなかった。 英文で書いたから、ラブにはすぐに解らないかも、と思うのは酷いだろうか。 「え~、いいじゃん」 「だめよ、渡す楽しみなくなっちゃうじゃない。 朝ごはんも私が作っておくから、ラブはもう少し寝ててね」 朝ごはんのメニューを頭の中で選んでいく。 今朝くらいは用意してもてなしたかった。 「は~い。 そっか、せつな、やっぱり……」 ラブには四つのハートを集めたクローバーの大きなチョコレート。 美希とブッキーにはそれぞれハート型の中くらいのチョコレート。 ブッキーのチョコには犬っぽい顔が描かれていた。 そして、美希のチョコには赤いトッピングが散りばめられて、 中心に青いスペードの意匠が刻まれていた。 ラブは、ドアの外でもたれかかって考えた。 全部は読めなかった。 でも多分あれは、あの言葉の意味は。 (あたしのチョコのメッセージカード、抜いておかなくちゃ) 「大は小をふくむ、な~んてね」 先に洗面所で顔を洗おう。 そう決めてフラフラと廊下を歩いた。 「今朝はずいぶん早くから頑張ったのね、せっちゃん」 「おはよう、せっちゃん」 「おはよ~おとうさん、おかあさん、せつなっ」 「おはよう、おとうさん、あかあさん、ラブ」 ほとんど三人同時に居間に入ってきた。 ラブはあれからは寝られなかったのかもしれない。 少し目が赤かった。 「あの、おとうさん。今日は遅くなるって聞いたから、 これ、いつもありがとう…………大好き」 真っ赤な顔でせつなは恐る恐るチョコを手渡した。 もらえるとは思っていたおとうさんも、それ以上に真っ赤だ。 躓いたり、どもったりしながらなんとか受け取った。 「えへへ~おとうさん、あたしからも」 せつなに触発されたのか、ラブも軽く抱きついてから渡した。 「あらあら、今日は良い日になったわね、お父さん。 これは残業も頑張らなくちゃね」 おかあさんも凄く嬉しそうだ。 「ラブにはこれ、持って行くにも大きいし、 …………大好きよ、ラブ」 「うん、あたしもだよ、せつな」 自作のチョコレートを交換してから、ラブがせつなを見つめる。 その目はとても愛しそうで、でもどこか寂しそうな憂いもあった。 「さっ、遅刻するわ、急ぎましょうラブ。 えっ!」 突然、手をぐっと引かれる。 ラブはせつなの首に両手をかけて強く抱きしめた。 ぎゅ~っと。 「どうしたの、ラブ。ちょっと苦しいわ」 「……………………っ、 なんでもないっ、行こっ、せつな!」 惜しむように離れた後にあったのは、いつもの笑顔満面のラブだった。 競-389へ
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/661.html
「もしもし、美希!今すぐウチに来て!いいから早く!」 「ブッキー!あたしんちにすぐ来て!寝たら承知しないよ!」 あたしはとにかく、この部屋で起こった現象をいち早く伝えたかった。 家にはお父さんもお母さんもいるけれど、この二人を選んだのには理由がある。 ◇ ◇ ◇ 「ラブ、どうしたの?こんな朝早くから!」 ジャージ姿の美希たんがあたしの部屋に入って来た。 朝のジョギングの途中だったらしく、汗で濡れた頬に髪が貼りついている。 「ふわぁ、おはよう、ラブちゃん。日曜日なのに・・・。」 続いて、ブッキーも部屋にやって来た。 その声と表情からして、とても眠たそうだ。 「ごめんね、美希たん。ブッキー。こんな時間に呼び出して。」 「それでラブ、一体何の用なの?」 「美希たん!こ、こ、これを・・・。」 おずおずと美希たんに1通の手紙を渡す。 「別に普通の手紙じゃない。どれどれ・・・。」 「桃園ラブ様・・・ラブ宛てね。で、差出人は・・・」 「東せつな・・・せつな!?せつなちゃんなの!?」 「だってせつなは今はラビリンスに・・・」 「あたしも初めは信じられなかったよ!でも・・・」 あたしは30分ほど前の出来事を話した。 ベッドで寝ていたら、聞き覚えのあるメロディが部屋に響いて。 そして部屋の鏡から眩しい光が発せられて、この手紙が残されていた事を。 「とにかく、その手紙を読みましょ。ラブ。」 「そうそう、せつなちゃんからの手紙だもんね。きっといいことが書いてあるよ!」 「う、うん。じゃあ開けるよ。」 封筒を丁寧に開き、中から手紙を取り出す。 ああ、確かにせつなの字だ。 早く読んでよ、と二人に促されてその手紙を読み上げた。 ――ラブへ お久しぶり。元気にしてた?私は元気よ。 ラビリンスに戻ってからは毎日忙しくて、ようやく落ち着いてきたから手紙を書いているの。 あ、手紙が届いた時、驚いたでしょう。 他の世界には、こうして手紙をテレポートで送っているの。 私も前に、ラビリンスから鏡を通じて手紙をもらった事があったわ。 そう、不幸のゲージを壊しに行った時・・・あの時はごめんなさいね。 今、私はラビリンスの子供たちに関する仕事をしているわ。 国中の学校や幼稚園、病院などを視察しているの。 時にはそこで授業や講演を行ったり、子供たちと遊んだりもしているのよ。 どの施設でも、帰る時にはみんなが笑顔になっているわ。 これもラブたちと一緒に過ごした経験が生きているのかしら。 ラブ、私がいなくてさみしくない? そんな事ないよね、お互いに頑張るって私と約束したんだから。 あなたにはお父さんやお母さんがいる。 美希やブッキー、由美や学校の友達だって。 ミユキさんやカオルちゃん、ほかにもあなたと関わりのある人は数多くいるわ。 だからこれからも、みんなの幸せのために頑張ってね。 私もラビリンスのために精一杯頑張るわ。 きっとラブたちにまた会える事を祈って・・・。 ラブ、みんなによろしくね。 せつな ◇ ◇ ◇ 「せつなちゃん・・・うっ、うっ・・・」 「泣かないでよブッキー。アタシまで泣きたくなるじゃない。」 「だってぇ、せつなちゃんがこんなに頑張っているなんて・・・。うれしいけど、それが見られないのが悲しくて・・・。」 「そりゃそうだけど・・・って、ラブも!?」 「せつな・・・せつな・・・うえええ~~~」 結局、美希たんも交えて三人で涙が止まるまで泣き合った。 手紙をしまおうと封筒を手にすると、まだ中身があるのに気付いた。 何だろうと軽く振ってみると、中から数枚の写真が飛び出してきた。 「あれ・・・?この写真、どこにもせつなが写ってない。」 「そんな訳ないでしょ。よく見ればいるはずよ。」 「・・・あーっ!もしかして、これがせつなちゃんなの?」 そこに写っていたのは、あたしたちがよく知る黒髪のせつなではなく、銀髪の少女――イースだった。 ただ、かつてラビリンスの幹部として悪さを働いていた頃の表情は全く無かった。 あるのは希望にあふれた輝く瞳、そして笑顔。 あたしたちは改めて1枚ずつ、写真を見始めた。 白い衣装を身にまとったせつながウエスター、サウラーと一緒に手を取り合っている写真。 スーツを着たせつなが演壇に立っている写真。 エプロン姿のせつなが子供たちと触れ合っている写真。 「せつなもずいぶん偉くなったものね・・・。」 「この調子なら、せつなちゃんの夢が実現する日も近そうね。」 「あたしたちも、せつなに負けずに頑張らなくちゃ!」 そのまま、写真を眺めながらあたしたちはおしゃべりに夢中になった。 しばらくすると、階下でお母さんの声がした。 「ラブー、美希ちゃんと祈里ちゃん来てるんでしょー。一緒に朝ごはん食べてってもらってー。」 「はーい!今行くからー。美希たん、ブッキー、行こっ!」 そうだ!お母さんやお父さんにもこの手紙と写真を見せなくちゃ。 どんな反応をするのか、ホントに楽しみだよ。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/709.html
せつなちゃん。 せつなちゃんがいなくなって、早いもので、もうすぐ一ヵ月が経とうとしてる。 ラブちゃんは、今日も元気に、精一杯、頑張ってるよ。 息吹 「おはよう、美希タン、ブッキー!!」 「おはよう、ラブ」 「おはよう」 いつものように、朝の待ち合わせ。途中まで一緒に学校に向かう、わたし達三人。 「おはよう、皆」 「おはよーございまーす」 「うぃっす。今日も元気だな、ラブちゃん!!」 「あはは。おっはよーございまーっす」 ずっとこの街で、この商店街で暮らしているから、皆、家族のようにわたし達に接してくれる。中でもラブちゃんは、 皆の人気者。色んな人に挨拶をして回って、笑顔を振りまいている。 「ホント、ラブって人気者ね」 呆れたように、でも、暖かい目で美希ちゃんが言う。ラブちゃんは、それに答えるように笑って、 「美希タン程じゃないよ。見たよ、昨日出た雑誌。すっごくカッコ良かった!!」 「ふふん、そりゃあたし、完璧だもの!!」 髪をかきあげる仕草も様になる、そんな美希ちゃんの姿に、わたしとラブちゃんは顔を見合わせて笑う。 素敵な友達を持てて、わたし、幸せだなぁ。 「じゃあ、また放課後にね」 「うん。美希タン、まったねー」 「行ってらっしゃい」 美希ちゃんとは駅の前で別れる。電車で一駅程の所に、美希ちゃんの通う学校はあるから。 「けど、考えてみたら、アタシ達ってすごいよね」 「なにが?」 「だってさ、読者モデルの幼馴染を持ってる子なんて、そんなにいないよ?」 美希タンには、精一杯、頑張って欲しいなぁ。言いながら歩くラブちゃんの言葉に、わたしは笑って頷いた。 もしも、他の人が言ってたなら、少し嫌味というか、鼻にかけたところを感じてしまったかもしれないその台詞も、 ラブちゃんが言うとそう聞こえないから不思議だ。 頑張って欲しい、その台詞も、心からの言葉だとわかる。 ラブちゃんは、いつだって人のことを考えてる。その姿が、人を動かす。そこには、自分に得だから、という気持ちが 無い。 例えば、美希ちゃんのことだってそうだ。美希ちゃんが有名になっても、自分はそんな有名人の友達だ、と自慢する ようなことを、ラブちゃんはしない。頑張ってと願うのも、そうして美希ちゃんが夢を叶えることを純粋に願っているからだ。 ラブちゃんの口癖。幸せゲットだよ。 本当は、ラブちゃん以外の人が幸せになっても、ラブちゃんの得になることは無い。 他人の幸せを見て、微笑ましい気持ちになったとしても、それは、本当に自分が幸せになったというのとは違う。 けれどラブちゃんは、他人の幸せを見て、自分の幸せだと感じられることが出来る。 それはとても素敵なこと。 「今頃、どうしてるかな」 「え?」 「せつなだよ。ラビリンスに帰って、元気にしてるかなって」 そう。素敵なこと。 けれど。 「せつなちゃんがいなくなって、ラブちゃん――――寂しい?」 「そりゃもちろん、ね」 ラブちゃんは笑う。その台詞に、嘘は無いだろう、きっと。 少し、その表情に、影が落ちるから。 「けどね」 「――――」 「せつなは、ラビリンスの皆を幸せにする為に行ったんだから――――アタシが寂しいなんて、言ってられないかな」 ラブちゃんは、他人の幸せを見て、自分の幸せだと感じられることが出来る。 じゃあ、ラブちゃんの幸せは? ラブちゃん自身の、本当の幸せって? ダンスの振り付け。無意識に自分の隣に、四人目の彼女を探してるよね。 カオルちゃんのカフェのテーブル、四つ椅子のついた席に座るのが当たり前になってる。 登校の時や、下校の時。わたし達と別れて一人になった瞬間、寂しそうな顔になってるの、気付いてた? 思い出してるんだよね、ラブちゃん。 せつなちゃんのことを。 前は、一緒に家まで帰ってたんだものね。 急にいなくなったから、慣れてないんだよね。 今でもまだ、せつなちゃんがいない隣に違和感を感じてるんだよね。 でも――――でもね、ラブちゃん。 もしも。もしもだよ。 ラブちゃんが行かないで、って言ったら。 せつなちゃんは、ラビリンスに行かなかったんじゃないかな? 「それは違うよ、ブッキー」 わたしの問いかけに、驚いた顔をして見せた後、ラブちゃんは首を横に振った。 「せつなって、頑固だからさ。自分で決めたら、曲げたりしないよ。だから、アタシが何を言ったって」 「ホントにそう思う?」 立ち止まって、わたしは言う。 ラブちゃんは数歩遅れてから足を止め、背中の鞄を担ぎ直した後、肩越しにわずかに振り返り、そして、 「思うよ」 そう言った。 けれどその声は、どこか硬くて。わたしに目を向けてなくて。 いつものラブちゃんの、声じゃなくて。 「――――――――――――」 わたしは何も言わず、黙ってラブちゃんを見る。手に持つ鞄の取っ手を、ギュッと握りしめながら。 ラブちゃんは。 そんなわたしを置いて、歩み出そうとして。 うなだれる。 「ブッキー」 「なぁに、ラブちゃん」 「アタシが言ったら、せつなは行かなかったって――――本気で、そう思う?」 「うん。思うよ」 「……自惚れていいのかな、アタシ」 「うん。自惚れていいと思う」 そっか。そう言ったラブちゃんの声は、嬉しそうだけど、少し湿っぽくて。 やっぱりいつものラブちゃんじゃないようで。 「でもね、でも――――やっぱり、言えないよ、ブッキー」 振り返ったラブちゃんの笑顔に、わたしは息を飲む。 涙を必死に我慢した、笑顔。 「だってね、桃園ラブは、そういう子だもの――――せつなの知ってる、桃園ラブは」 「……ラブちゃん」 「そんな我がままで、せつなの夢を止めちゃうようなことをするような子を、せつなは――――」 好きになってくれないよ。 ラブちゃんは、言って、俯いた。 歩道の石畳の上に、輝く一粒の雫が落ちるのが、見えた。 「そんなこと――――」 ないよ。そう、言ってみたけれど。 「なくないよ」 ラブちゃんは、すぐにそれを否定する。 「そんなことない。せつなちゃんは、ラブちゃんが何を言ったって、ラブちゃんのことが好きだよ」 「うん、かもしれない――――けど」 アタシが耐えられないんだ。 「――――何に?」 「引き留めたことで、せつなが後悔することが」 夢を諦めさせ、側にいさせたとしても―――― 「それこそ違うよ、ラブちゃん」 「――――」 「せつなちゃんが後悔するんじゃない。ラブちゃんが、後悔するんでしょ」 「…………うん」 多分、せつなは何も言わない。 でも、アタシは多分、その向こうに、せつなの夢の息吹を見てしまう。 きっといつまでも消えることがない、アタシが途切れさせてしまった夢の欠片を。 それをアタシは―――― 「きっとずっと、引きずっちゃうよ」 わたしは、佇む。 目の前の女の子は、わたしの幼馴染。 でも、わたしが思っていた以上に、大人で、強くて。 けれど、とても脆くて。 こんなに傷ついている彼女を見るのも。 こんなにも弱々しい彼女を見るのも。 初めてじゃない。幼馴染だから、これまでにだって――――けれど。 こんなに苦しそうな彼女は、初めてだ。 らしくない、と思う。でも――――それも、ラブちゃん、なんだよね。 友達想いで、誰かの幸せを自分の幸せに出来る、ラブちゃん。 でも、自分の幸せと、他人の幸せを秤にかけたら、他人の幸せを優先させる。 たとえそれで、自分が苦しくても――――辛くても。 それもラブちゃん。 わたしの幼馴染。 わたしの大好きな、幼馴染。 結局。 わたしは初めて、学校をさぼった。 何も言わなくなったラブちゃんの手を引いて、公園に行った。 カオルちゃんのカフェに行くと、驚いた顔をした後、何も聞かずに椅子を勧めてくれ、ドーナツとコーヒーを出してくれた。 わたし達の間に、言葉は無かった。 ただ、二人で空を眺めた。 白い雲を、目で追いかけ続けた。 せつなちゃん。 ラブちゃんは、頑張ってるよ。 精一杯、『元気なラブちゃん』を、頑張ってるよ。 だからね、せつなちゃん。 早く、せつなちゃんの夢を叶えてね。 そして、ラブちゃんの夢を叶えてあげて。 元気で明るくて。 でも、不器用で、臆病な、わたしの大事な友達の夢を。 どうか。一日でも早く。 きっとその日は、遠くないって。 わたし。信じてる。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1018.html
「美希」 来ると思ってた。 あたしがそう言うと、きっとせつなはきょとんと首を傾げるだろう。 だからあたしは何も言わずに振り向いた。 せつなは不思議そうな表情で、あたしを見詰めていた。 「せつな」 「なにしてるの、こんなところで。風邪、引くわ」 「平気よ」 あたしはそう言って小さく笑うと、せつなの腕を引いた。 油断していたのか、せつなは容易くあたしの腕の中。 「美希」と戸惑ったような声がして、せつなはもがいた。 けれどそれは表面上だけで、本気であたしの腕から逃れたいわけじゃないはずだ。 その証拠に、せつなはすぐにもがくのをやめた。 「どうしたの、美希。眠れないの」 静かな声が訊ねる。せつなの表情は見えない。 もっとも、後ろから抱き締めていなくても暗くて見えなかっただろうけど。 「わかんないの、せつな」「わかんない?」 「そう、いつも完璧なはずのあたしがね。……よくわかんないの」 夏休みを利用してラブやブッキーを含め四人で旅行しようという話になった。 旅行と言ってもあたしたちはまだ中学生で大した遠出は出来ないので、 ラブの家(ここでもう既に旅行じゃない)に泊まることになった。 結局いつものお泊まり会のようなものだけど、夏休みということで それなりにテンションが上がり楽しかった。楽しかったけれど、あたしはここしばらく ずっと抱えていた悩み事のようなものが引っかかって、うまく笑えていなかったように思う。 ラブとせつなの部屋が繋がるバルコニー。 ラブの部屋ではその部屋の主とブッキーが眠っているだろう。 あたしは無理を言ってせつなと同じ部屋にしてもらった。どれもこれも悩み事を解決するためにだ。 あたしはいつでも完璧でいたいから。それなのに一緒の部屋にいるとその悩み事はますます大きくなっていくだけだった。 「ねえ、美希」 「うん?」 せつなを抱く腕の力を強くしたまま黙り込んだあたしに、せつなはふと思い出したようにあたしを呼んだ。 なに、と訊ねると、せつなはその細くて白い指を夜空へと向けた。真ん丸な、お月様。 「……きれいね」 「……そうね」 せつなはきっと今、微笑んでいるのだろう。 あたしは突然、そんなせつなをからかいたくなった。 「月がきれいって英語でなんていうか知ってる?」 「あなたを愛してる」 でしょ? せつなが振り向いた。月の光に照らされた微笑むせつなはとてもきれいだと思った。 「英語で、って言ったのに」 「それを日本語に直したらそうなるんでしょ」 「誰が教えたのよ。まあラブだろうけど」 ため息。ロマンチックな雰囲気になるかと思ったが違ったみたいだ。 せつなは再び前を向くと、あたしの胸にもたれ掛かってきた。 「美希は」 「え?」 「美希は月がきれい、言ってくれないの」 手に、やわらかな感触。せつながあたしの手を握ってくれている。 あたしは……。そう言いかけてやめた。あたしの悩み事。 もしかして、あたしのせつなへの気持ちは冷めてしまったんじゃないかということ。 よくよく考えれば、せつなはあたしのことを好きでいてくれているのか不安だったことでもある。 だから、今のせつなの言葉でそんな悩み事は吹っ飛んでしまった。 せつなはあたしが好きだと言ってくれるしあたしだって。 「せつながもっともっと好きにならせてくれないと言ってあげない」 けれど、いつでも完璧でいたいあたしはもう二度とそんなバカげたことを考えなくていいように、 せつなの愛の言葉を胸に刻むことにした。 終わり
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/286.html
せつな「ラブって大輔の事好きなの?」 ラブ「え?急にどうしたの?」 祈里「あ、あの、私も気になるな…」 ラブ「ブッキーまで…。友達としてなら好きだけど、彼氏とかそんなんじゃないよ」 せつな「良かった…これからも精一杯頑張れるわ!」 祈里「私、信じてた!」 ラブ「そういうせつなとブッキーはどうなの?せつなはラビリンスの二人と、ブッキーは御子柴君とは?」 せつな「やめてよ。虫酸が走るわ」 祈里「誰それ?」 美希「あれ?どうしてあたしには聞かないの?」 ラブ「だって・・・ねぇ?」 祈里「美希ちゃんは和ちゃんと・・・」 せつな「そ、そうだったんだ・・・禁断の関係なのね」 美希「な、なんだ。みんな分かってるじゃない!」 美希(言えない・・・和希とは何でもないなんて、今更言えない・・・ッ!)
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/237.html
「せつなちゃん、大丈夫?」 「……う、うん、なんとか」 あれからしばらくして、ようやく立ち直ったせつな。 とはいえ、先ほどのやりとりを聞かれた恥ずかしさもあって 心配して声を掛けてきた祈里への返答もぎこちない。 「はい、これ、買ってきたお茶。これ飲んで落ち着いて」 「うん、ありがと、ブッキー」 祈里が差し出すペットボトルを受け取るせつな。 それを飲む前に、真っ赤に染まった自分の頬に当ててみる。 中のお茶に冷やされたペットボトルの冷たさが心地良い。 おかげで、火照った心が落ち着いたような気もする。 「全く、見られるのが嫌なら最初から人目につくところでいちゃつかないの!」 「……うう、そこは反省するわ」 「あたしは全然気にしないのになーっ!」 「ひゃあっ!」 ……気がしたのだが、ラブが横から抱きついてきたので体温心拍数共に再上昇。 「……ラ、ラブ、流石に二人が見てるんだし、こういうことは……」 「いーじゃんせつな、もう二人にも見られちゃったんだし、 むしろ遠慮する必要なくなったよね、わはーーっ!」 反省した手前、一応ラブを止めようとするせつなだったが、 既にラブの自制心という名のブレーキには欠陥が生じていたらしかった。 (もう、ラブったら、私は恥ずかしいからって言ってるのに……) そう思い、こうなったら美希か祈里に何とかしてもらおうと 二人に助けを求めようとしたせつなを襲う違和感。 ギュッ ラブの反対方向からも誰かに抱きつかれる感覚。 「なるほど、これがせつなの抱き心地なわけね」 「み、美希?!」 今しがた、助けを求めようとした本人である美希が、そこにいた。 「な、何してるの?」 「いやー、ラブがそこまでハマる抱きごごちってどんなもんかなーって、あたしも興味あって」 「興味持たなくていいわよ!」 せつなの抗議を美希は聞こえないフリ。 「んー、柔らかくて、暖かく、匂いもいい。 何よりも冷たいけどすべすべしてて、きめ細かいこのお肌の感触が……完璧ね!」 「さっすが美希タン、わかってるねーっ!」 勝手に論評まで始める始末である。 美希は普段どちらかというとラブを止める役に回ることが多いのだが 時々、二人揃って悪ノリに走ることもある。 この辺は幼馴染ならではの阿吽の呼吸のなせる技ではあるのだが。 標的にされるほうは溜まったものではない。 「ねえ、ラブちゃん、美希ちゃん」 救いの手は別の方向から来た。 そうだ、まだブッキーがいる。 ブッキーならラブ達を止めてくれるかもしれない。 期待を込めた視線を祈里に送るせつな。 今なら彼女の背中に天使の羽だって見えるかもしれない。 「せつなちゃんを抱きしめるのって、そんなに気持ち良いの?」 興味深々と言った表情を浮かべて聞く祈里の姿。 「……ブッキー」 天使の羽は、気のせいだったらしい。 「そりゃもう!すっごく気持ち良いんだよ!」 「だからブッキーも遠慮せずに、ほら」 そう言って怪しい笑みを浮かべ、祈里に向かってオイデオイデと手招きするラブと美希。 「そうなんだ……じゃあ私も」 それに応じるようにフラフラと近づいて来る祈里。 本で読んだ、幽霊が生者を手招きして仲間に入れようとする、という話を ふと思い出したせつなだったが、首を振ってそれを頭から追い出すと 目の前の現実をどうにかすることに集中する。 「ね、ねえブッキー、お願いだから、止めてくれない?」 しかしそんなせつなの懇願も、祈里には届かない。 「せつなちゃん……ごめんね、私も、やってみたいの……えいっ」 そう言いながら祈里が狙い定めた場所は、せつなの腿の上。 そこに頭を載せながら、ゴロンと寝る姿勢。 「あら、膝枕とは、やるわね、ブッキー」 「ああっブッキーずるい!それあたしもやったことない!」 「えへへ……ここしか空いてなかったから……」 そう言ってペロっと舌を出してみせる祈里。 「はあ……確かにせつなちゃんの匂い、良い匂い……」 「でしょでしょ、あたしはいつでもせつなの匂いで幸せゲットだよっ!」 「これはハマるわね、今度こういうアロマ作ってみようかしら」 最早三者三様に好き放題やり放題の有様。 「あのね……三人とも、本当に、もう許して……」 このままではいけない。 また恥ずかしさで、頭がショートしてしまう。 そう思い、精一杯頑張って訴えてみるせつなだったが 「「「だーーーーーーーーーーーめっ!」」」 笑顔と共に即効で却下された。 「ねえねえブッキー、あたしの後であたしの場所と交換しよ?」 「ダメよラブ、あなたはいつもせつなと一緒なんだからちょっとは遠慮しなさい、 次代わるのはあたしよ」 「ええーーっ、美希タンそれはずるいよっ!あたしもせつなに膝枕されたいっ!」 「ゴメンね二人とも、私ここが一番好きだから……今日はダメ」 「「ええーーーーっ!ブッキーずるいっ!!」」 「三人とも、いい加減にしてーーーーーーーーーーーーーっ!」 せつなにとっての試練の時間はまだまだ始まったばかりのようだ。 それから数刻の後。 せつなと、それを囲む三人の姿。 しかし、そこには先ほどまでの喧騒はない。 聞こえてくるのは三つの規則正しい呼吸音。 ラブ、美希、祈里の三人がそれぞれの姿勢でせつなに抱きついたまま、すう、すうと立てている寝息の音だ。 あの後、それぞれ思い思いにせつなを堪能した後、いつの間にか寝入っていたのだ。 (全くもう……) 唯一その音を出していないのは、中心にいるせつな。 三人を起こしてしまわないように、心の中で呟く。 (……すっごく恥ずかしかったんだからね) しかし言葉とは裏腹に、せつなの顔には柔和な笑み。 それは多分、三人のことを感じられているから。 ラブの、美希の、祈里の、体の柔らかさ、暖かさ、匂い、 そしてその中にある、せつなのことを思う、優しさ。 それらを感じることが出来ているような気がするから。 (……だから、すっごく幸せな気分、かな?) そう思うせつなもだんだんと微睡みの中。 自分を包む三つの幸せに身を委ねたまま、意識を手放していくのだった。 「お嬢ちゃん達、おっまたせ~すっかり遅くなっちゃってゴメンよ~ なんせ久々の新作だけに、芯をサクっとさせるのが大変だったんだよね ドーナツに芯はないけど、グハッ!」 やっと出来上がったドーナツを持ってカオルちゃんが丘にあらわれたのは、それから更に後。 紙袋を片手に4人のところまでやってきたのだが。 「あらら……みんな寝てらあ」 そこには、穏やかな、安心しきった表情で寝息を立てているせつなと そのせつなを左右から抱きしめるラブと、美希と、腿を枕にする祈里と せつなを中心に、思い思いの姿勢で眠る少女達の姿があった。 「ま、いーや、ドーナツ、ここに置いとくよ」 そう小声で言うと、紙袋を置いて、立ち去ろうとするカオルちゃん。 しかしその途中でふと何か思いついたように立ち止まり、四人の方を振り返る。 「お嬢ちゃん達、そうしているとまるでさ……四つ葉のクローバーみたいだねえ」 誰に言うとでもなく、そう呟く。 そんな彼のサングラスの奥に、優しい光が湛えられていたのは一瞬で。 「……いっけねえ、オジさんつい臭いこと言っちゃったよ。 まあ、オジさんの靴下はもっと臭いけどね、グハッ!」 いつものカオルちゃんに戻ると、丘を去っていった。 四つ葉町の町外れにある小高い丘の上。 一面にシロツメクサが咲き乱れる草原に、今はすっかり人気はなく。 あるのはただ、幸せのもと。 寄り添うようにして眠る、四つ葉のクローバーの化身だけ。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/60.html
(これでよし、と…。) 祈里は慎重にゼリーを型から外し、器に盛り付ける。 硝子の器には直径5センチ程の色とりどりの球形のゼリーが並んでいる。 いかにも女の子が喜びそうな可愛らしい見た目と裏腹に、 中身は殆んどが高アルコール度数のテキーラ。ネットで偶然レシピを見付けた。 度数の高いお酒に濃く甘い味を付けて、球形の氷を作る型に入れて、固める。 見た目の可愛らしさに騙されて口にすると…アルコールに慣れていない人は 数個でメロメロに酔い潰れて、ちょっとやそっとの刺激では目も覚めない、らしい。 一部では有名な大人のナンパアイテムだそうだ。 もうすぐせつなが家にやって来る。ひとりで。 少しくらいおかしい、と感じても生真面目なせつなの事だ。 手作りだと言えば残さず食べてくれるだろう。 (ごめんね。) 自分のしようとしてる事。とても現実とは思えない。 良心の呵責と罪悪感。でもそれ以上にゾクゾクするような興奮と高揚感。 でもこうでもしないと、あの人を手に入れる事はできない。 心は、とうに諦めた。だから、せめて体だけでも。どんな卑怯な手を使ってでも。 例えそれが、取り返しのつかないほどの傷を伴うものでも。 「お邪魔します。」 せつなちゃんは相変わらず堅苦しいくらい礼儀正しい。 玄関でお母さんに挨拶したんだから、わたしの部屋に入る時までいいのに。 「今日もラブちゃんは補習なの?」 「そうなの。小テストの結果が悪かったんですって。でもラブったら、 勉強嫌いなのにわざわざ勉強の時間増やすような事するの、どして?」 どうやら、一度で合格すれば余計な時間を使わずにすむのに、そうしないのが 不思議らしい。 皮肉ではなく本当にそう思ってるらしい表情に、少しラブちゃんに同情する。 そううまく行くもんじゃないのよ、せつなちゃん。 暫し他愛ないお喋りに興じる。しかし内心は気もそぞろだ。 「そうだ、おやつ食べない?初めて作ったヤツだから味の保証は出来ないけど。」 何気無いふうを装い、例のゼリーをせつなちゃんの前に置く。 不自然にならないように自分の前にも同じ物を。 ただし、わたしのは本当にただのゼリーだけど。 「これなあに?すごく綺麗ね。」 警戒心のない笑顔で問い掛けられ、少し胸の奥がチクっとする。 「えっとね、少しお酒の入ったゼリーなの。ちょっぴり大人の味?」 「へぇ、ブッキーは何でも器用に出来てすごいわね。」 一つ、スプーンで掬って口に運ぶ。少し、せつなちゃんは驚いた顔をする。 「んっ…、結構、お酒効いてるわね。」 そりゃあ、そうよ。殆んどテキーラなんだもん。 「ホント?ごめんなさい。苦手だったら残してね?」 「平気よ。ちょっとびっくりしただけ。すごく美味しい。」 せつなちゃんは続けて口に運ぶ。 こういう言い方をすれば、彼女は断れない。それを分かってて言うんだから、 ずるいな、わたし。 わたし達はお喋りしながらゆっくり食べる。わたしはもう食べ終わった。 せつなちゃんの器には、後一つと半分。 せつなちゃんの顔を見ると眼が熱っぽく潤み、頬が紅潮している。 会話の受け答えが緩慢になり、かみあわない。 かなり、効いてるみたいだ。 「せつなちゃん、まだ残ってるよ。」 食べさせあげる。そう言ってわたしはスプーンで残りを口に運ぶ。 「あーん、して。」 彼女は虚ろな眼で、素直に口を開く。つるり、とゼリーが滑り込む。 開いた唇から白い歯と、奥にピンクの舌がチラリと見えた。 それがなぜかすごくイヤらしく感じてイケナイものを見てしまったような気分になる。 程なく彼女はわたしのベッドにもたれるようにして、うとうとと船を漕ぎだす。 寝るなら、ちゃんと横にならなきゃ…彼女を気遣う素振りで手を貸し、 そっとベッドに横たえる。 もう、そんなわたしの声も届いていないようだ。 ベッドの感触に安心したのか、すぐに規則的な寝息が聞こえ始める。 それから五分、十分…聞こえるのは彼女の寝息と時計の音。 そして、外に聞こえてしまいそうなくらいの自分の鼓動。 肩を揺すり声をかける。 「……せつな…ちゃん…?」 軽く頬を叩いてみても全く反応しない。 眼が、自然と規則正しい寝息を立てる唇に吸い寄せられる。 (…おいしそう……) ペロリ、と唇を嘗め、ちゅっと音を立てて吸い付く。甘いゼリーの味。 鼻をアルコールの匂いが掠め、自分まで酔ったような気分になる。 制服のネクタイをほどき、シャツのボタンを外して行く。 白い肌が露になり、年に似合わぬ豊かな胸が現れる。 背中に手を回し、ブラのホックを外す。 無理に手を差し込んだせいで、せつなは身動ぎ、軽く呻いて寝返りをうつ。 その隙に半袖シャツの腕からブラの肩紐を外し、ブラを完全に脱がせる。 (綺麗……) 再びせつなを仰向けにして、ゆっくりと乳房を手のひらで包み込む。 柔らかい、それなのに力を入れると指が押し返されそうな弾力のある感触に 祈里は陶然とする。 (気持ちいい……せつなちゃんの胸。) 最初は乳房を撫で回すように、次第に力を加えゆっくりと揉みしだく。 先端が徐々に尖り、ぷつりと手のひらに当たる。 「……ん…んん…、ふぅ…」 吐息に微かに声が混じる。乳首が擦れる度、息が上がってくる。 (殆んど意識ないはずなのに…。) 明らかに感じてるらしい反応に祈里の愛撫が大胆になってくる。 可愛い桃色の乳首は摘まんで捏ねると、だんだん色づき弾けそうなくらい 張り詰めてくる。 唇で挟み、舌でくすぐり、軽く甘噛みする。 「んあ…、はぁっ…あっ…んっ…んぅ…」 祈里の舌が、指が動く度にせつなは切な気な吐息を漏らし、身を捩る。 (…本当に、眠ってるの…?) 反応の良さについ、そんな事を考えてしまう。 でも意識があったら抵抗しないはずないのに。 胸元に顔を埋めたまま、そろそろと太ももを撫で、下着に手を潜りこませる。 秘裂を指でなぞると、そこはもう、蕩けるように熱い。 中指が軽い抵抗を受けながら呑み込まれる。 待ち兼ねたように蜜が溢れ、肉が絡み付いてくる。 くちゅくちゅと卑猥な音を立てて熱く狭い肉の中を探る。 こんなにされても起きないのか…、胸元から顔を上げ、せつなの様子を窺う。 せつなはきつく眼を閉じたまま微かに眉を寄せ、下腹部の感覚に集中している… ように見える。 指を入れたまま、性器の上にある突起を摘まんでみる。 せつなの体がビクンと跳ね、中がきゅうっと締まる。 「…あっ、あっ、あっ…はっ…あんっ…ああっ」 小刻みに体が震え、ひときわ声が高くなってくる。 普段の低く、落ち着いた声とは違う、鼻に掛かった甘えた声音。 確かに同じ声のはずなのに。 ビクッと大きくせつなの体が震え、力が抜ける。 (もしかして、イッちゃった…?) 荒い息遣いで胸を喘がせているせつなに口付ける。少し迷って 軽く舌でせつなの歯を抉じ開ける。 せつなの方から舌を絡めてくる。それに応えるよう、強く祈里も舌を絡める。 ただただ、嬉しかった。自分の拙い愛撫でせつなが達し、口付けに応えてくれる。 「……ラ…ブ、んんっ…ラブぅ…」 心臓を冷たい手で鷲掴みにされた気がした。思わず体が強張る。 せつなはそんな事にも気付かない風に、祈里の背中に腕を回し 愛し気に抱き締める。 (…なんだ…、ラブちゃんと間違えてるんだ。) 道理で抵抗しないわけだ。愛しい恋人の愛撫なら、逆らう理由なんてない。 せつながうっすらと眼を開けそうになる。祈里は慌てて、手のひらで せつなの瞼を覆う。 「……せつな…可愛い。大好き…」 そう、耳元で囁く。 「いい子ね…、お休み……。」 せつなは安心したかのように、また静かな寝息をたて始める。 (これから……どうしようか……?) 祈里はせつなが目を覚ました後の反応を想像する。 自分を抱いていたのがラブではなかったと分かったら……。 信頼していたはずの親友が、自分を騙して犯したのだと知ったら。 (…このくらいで、壊れたりしないよね?せつなちゃんは強いもの。) 祈里は椅子に腰掛け、せつなを見下ろす。 わざと着衣は乱したままにしておく。 (…早く、起きないかな…。) 祈里はゆっくりと微笑みを浮かべる。これからの事を思い浮かべながら。 黒ブキ11へ続く
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/334.html
お互い真っ赤になって微妙な距離をとりつつ、由美の所に戻る二人。 「ただいまー由美ー」 「あら?」 「二人ともズルいよ~。」 借り物の内容を知って、選ばれなかったことに 落ちこむ由美。 「あはー。ま、まぁ…」 「あ、由美ちゃんもこれからお昼、一緒にどうかしら?」 「いいの…かなぁ~?」 「うん!あたし、いーーーーっぱい作ってきたんだよ!」 出てきたのは立派なお重の箱。すると、タイミング良く観戦に 来ていた美希と祈里も合流する。 「張り切ってたわねーラブ。カッコ良かったわよ。」 「せつなちゃんも楽しそうだった!」 由美も加わり、豪勢な昼食は一層賑やかな雰囲気に。 「ラブってほんと料理上手だね~。」 「照れるじゃんか由美ー。」 「精一杯作ってくれたから、本当に美味しいわ。」 「アタシの家にもラブがいてくれたらなー。」 「うんうん。ラブちゃんの手料理ならわたしも大歓迎!」 (昼間っからイチャイチャしてはる。あかん、この光景シフォンには強すぎや。) 「午後の競技って、ラブちゃんとせつなちゃんが出るアレだよねぇ?」 「そう、ソレ!そのために来た様なもんなんだから!」 「ですよね~。」 (頑張ってね、二人とも...) この日のために、ラブとせつなちゃんは一生懸命練習したんだもんね。 運動音痴なラブは、何とかせつなちゃんにイイ所を見せようと頑張って。 けど、息が合わないってせつなちゃんはアタシに相談に来て。 ほんと真面目なんだから。 結局アタシはせつなちゃんと練習してたけど、実は裏では… 「せつなにコンビ解消だって言われたぁー。もうガックシだよぉ……」 「よしよし。まだ諦めちゃダメだよ?ラブちゃん。」 「やるしかないわね…。秘密で特訓開始よ!」 ―――そして迎えた二人三脚。 「せつな…。もう一度、コンビ組んでもらえない…かな?」 「で、でも由美ちゃんと…私は…」 (あっ…。この目。あの時と…) 「イイよ!せつなちゃん。」 〝トン〟と背中を後押しして。もちろん笑顔で。 「由美ちゃん…」 「由美…」 ちょっと困惑気味のせつなちゃん。アタシはラブが特訓をしていた事を蒼乃さんと山吹さんから 教えてもらっていて。ラブの親友は由美ちゃんもだよ!って。アタシ、嬉しかったな~ 「いってきなよ!」 笑顔で2人を送り出す。 …本当はせつなちゃんと… スタートラインに並び立つラブとせつな。 「いいわね、ラブ。やるからには…勝つわよ!」 「とっおぜん!」 不適な笑みを浮かべる2人。 「作戦成功ね。完璧すぎるわ。」 「私、信じてた。今回は由美ちゃんのおかげだね!」 満面の笑みを浮かべる2人。 (運動が苦手なラブも、せつなちゃんと組めばどんな競技だって、 互いを思いやる心で快勝だよね~) 再び声援を送る由美。 脚はもちろん、腕も肩も腰も密着する2人。 「なんかドキドキしてきたわ…」 「あたしも。けど!やるからには息ぴったりに完璧で!」 〝位置についてー。よーい〟 「互いに声掛け合っていくわよ。」 「うん!せーの!」 〝ドン!〟 見事、愛の力で優勝ゲットしたラブとせつな。 その影に親友の協力があり。 「ニッへへ~。どうだった?せつな!!」 「そっ…そうね!いい感じよ!!」 嬉しさのあまりに思いっきり抱き合う2人。 (ピーチはんもパッションはんも今は気にならへんけど、あとになってから照れくさいでー。 でもな、シフォン。これがほんまもんの青春やー。) 「あまじゅっぱー?」 (しゃべったらあかん!) 「由美ちゃん!」 「あ、山吹さん。2人とも1位です~!」 「…完璧よ!アナタのおかげだわ。」 「うん!由美ちゃんのその健気な所、わたしちょっとだけ泣いちゃった。」 「今度は由美ちゃんが表舞台に立つ番ね。」 「え?」 「四葉町のレクレーション大会。わたしたちと一緒に出よ?」 「……ハイ!」 (あっれー、3人…妙に仲良くない?) (そうね。でも私たちには勝てないわよ?) 5-395借り物競争はこちらです